2024-02-28
「きんとんにはエピソードがあるんです」
なぜかわからないのですが、きんとんを食べたい、お客様もきんとんが食べたいんじゃないか、って思ったんです。
ふと思い出したように、宮澤さんは話しはじめた。
そしてこう続けた。
きんとんにはエピソードがあるんです。
五年前だと思いますが、早陽子さんのお菓子を食べる機会がありました。
「お菓子を召し上がっていただきたいのですが、本日お時間ありますか?」
はい、お店の営業後なら時間あります。22時か23時になってしまうかもしれませんが。
「では、営業後にいらしてください」
早陽子さんが宮澤さんに伝えた場所は、獨歩の目の前にある鴨川の河川敷。
宮澤さんが営業後に向かうと、早陽子さんが河川敷に席を設け、きんとんを濾すところからつくってくれ、茶を点ててくれたと。
なんだかすごくないですか。
このエピソードがあったから、きんとんを食べたいんじゃないかってふと閃いたんだと思います。
考えたわけではない。ただふと思った。
そうして登場したきんとん。
打ち合わせ用のグループLINEで、早陽子さんが「きんとんの成形は獨歩でしたいのですが、スペースありますか?」と聞いてきたのは、そういうことだったのか。
この時期だからこその沖縄黒糖を使ったきんとんは、素材だけではなくエピソードでも、獨歩でのコラボレーションを象徴する一品だったと思う。
※聴き違いがあるかもしれません。しかし早くこのエピソードをここに残しておきたく。ご容赦ください。