2024-02-25
「瓶に残った米糠も全部使いたくて」
泉さんの料理には驚かされることが多い。
正直、はじめて訪れたじき宮ざわの料理は、ごだん宮ざわ以上の衝撃があった。
醗酵を醗酵っぽく食べさせない。
本当に醗酵なの?という程度に食べやすくして供してくれる。
生まれ故郷、ルーツを大切にしながらも、独りよがりにならない。
そんな泉さんの、目の前のお客さんに寄り添う真摯さには以前から舌を巻いていたが、ある調味料の話を聞いたときには一層驚いた。
「要太郎さんがつくってくれたどぶろくじゃないですか。この瓶に残った米糠も全部、使いたくて」
くしゃっとした笑顔でそう教えてくれた泉さん。
彼は料理に使わない食材のあまりものさえ大切に使い切る。
農家さん、生産者さんの仕事を100%活かす。
あまりものでつくった調味料やふりかけ。
これがまた、美味しい。
生まれ故郷である長浜の、当たり前にある醗酵が、彼の料理には貫かれているように思う。
食べにくくなりがちな昔ながらの郷土料理を、食べやすく、美味しく仕上げてくれる。
料理を食べてくれる人に喜んでもらいたい。
人が、常に彼の動機になっているのだろう。
そんな彼の周りには、生産者さんをはじめ、たくさんの料理人が集まる。
要太郎さんのどぶろくや権化シリーズ、南山さんの牛や羊、悠さんの茸などが宮ざわで味わえるのは、泉さんの姿勢によるところが大きいのだと思う。
要太郎さん、渡真利さんという、獨歩する料理人たちを調和させ、100%ではなく300%の美味しさへと昇華させてくれるのは、泉さんしかいないんじゃないかとさえ思う。
そんな彼が、新たなお店を開くらしい。
今回の獨歩イベントにおける泉さんの役割が、彼がはじめるお店の方向性を私たちに見せてくれるんじゃないかと、密かに感じている。
泉貴友インスタグラム